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サークル「五行膳」のブログ
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DATE: 2009/07/25(土)   CATEGORY: 豆蔵
(東方SS)馬肉
(mamezou_) しまうまも馬肉なのだろうか
(mamezou_) ていう議題でSS書いて
(fuji-mura) 桶
(mamezou_) まじか





 今日も日課の、小銭を賽銭箱に投げ入れて音を楽しんでいた霊夢。十四回目の取り出し作業中、背後に気配を感じて振り向くと、シマウマがこちらをじっと見つめていた。
 なんだキサマ、この雅な楽しみの邪魔をしに来たのか。それとも私を憐れんでいるのか。畜生のくせに。
 霊夢が睨み返すもシマウマは動じず、視線重なるまま。セミ達の鳴き声だけが絶えず。空には厚い雲がかかり、やがて雨でも降るだろうか。動かなくても、じわりと汗が出でて流れる。
「……エサあげるから、帰りなさいよ」
 腋がぱっくり開いたいつもの袖からニンジンを取り出し、シマウマの足元に向けて転がす。彼(彼女?)は二度三度それの匂いを嗅いで、それから噛り付いた。コリ、コリ、しゃく、しゃく、と、咀嚼の音がこちらまで聞こえてくる。
 ぺろりと平らげ満足したのか、シマウマは踵を返し、神社隣の森の中へ帰っていった。振り向きもしなかった。見送り、やれやれと溜め息を吐いた丁度その時、ぽつりぽつりと、空が雫を落とし始める。夏の気紛れに逆らう気も無く、いそいそ部屋に戻ろうとして、霊夢は、ふとシマウマが去っていった木々の間へ目をやる。そして口内に、昔堪能した味の幻が生まれた。これは――そうだ――いつだったか、魔理沙が熊本の土産に買ってきた馬刺しの味だ。にんにく醤油をつけて頂いた、甘みと歯ごたえのある生肉。しまった、ニンジンなぞやらんで、こっちが食べてしまえば良かった……小さな後悔を抱いた時、セミの鳴き声は激しい雨音に代わった。

 雨は明け方に止んだ。
 あのシマウマめ、次会ったら食ってやる……霊夢がそう思いながら日課をしていたら、十一回目の投げ入れ中に気配を感じた。振り向くと奴が居る……同じシマウマかどうかは解らないけれど。ただ昨日と同じように、霊夢をじっと見つめ続けてはいた。
 なんだ、ニンジンのお礼で食べられに来たのか。殊勝な心がけだ。
 賽銭箱から一歩離れ、シマウマに一歩近付く。彼は逃げようともしない。観念したのだろうか。それにしても馬というのは、食べ応えがありそうだ。魔理沙達でも呼んで盛大に馬肉宴会でも……と、そこでふと思う……シマウマの肉も馬肉なのだろうか、と。
 シマ(縞)ウマ(馬)だから、馬であることには違いない……でもそれって、例えば鳥ならなんでも食べられるって言うのと同じこっちゃないだろうか。ダチョウや鷲や、白鳥を食べるという話は聞いたことがな……あれダチョウって鳥類だよな?
 一人うんうん唸る霊夢を、シマウマは変わらずじっと見続ける。時折まばたき。何を考えているのだろうか。エサか。
 昨日と同じように……袖からニンジンを一本取り出し、足元へと転がした。今日は警戒する事もなく噛り付く。分厚く硬い生ニンジンを、ゴリゴリと音立てて砕き、飲み込む。
 腹を満たし満足したシマウマは、昨日と同じ道を帰っていった。その背を見送りながら、次に来る時までには、シマウマが食用に適しているのかどうか、調べておこうと決めた。

 今日は晴れているものの、怪しげな雨雲が彼方の山にかかっている。
 縁側でお茶の香りを堪能していた霊夢の耳に、賽銭箱へ何かを投げ入れる音が届いた。なんてことだ何年ぶりの参拝客だ。これは持て成さねば! と息巻いて走り出し、そこに着くとシマウマが居た。彼は霊夢を一目見て、それから咥えていた小石を賽銭箱の中に落とす。それから体ごと振り向いて、こちらをじっと見つめる。ちょうど、一昨日から続いた立ち居地が逆になっていた。
「……馬鹿にしてるの」
 などと言ってみるも、果たして理解しているのだろうか。言葉を受けて、シマウマの両耳がぴくぴく動いたのは、反応したからなのか、ただの生態なのか。ただ、それ以上の動きは、先日までの如しである。むうっと霊夢が小さく唸る。
 私が小銭を投げ入れる様を見て、憶えた行為か。こうすれば私が来て、エサもくれると思っているのだろうか。畜生め、もうとりあえず食べちゃおうか。美味しくなかったら……それはその時考えればいいし……。
「……いや……まてよ……」
 シマウマ、そうあの柄……もしかしてあれ警戒色じゃないか? 毒を持っている生物は、自分が毒持ちだと周囲に知らせるためにわざと艶やかな色を帯びるとか、そういうの。ヤドクガエルとか。あの馬が縞柄を手に入れたのは、そういうことじゃないのか。だとしたら迂闊に食べるのはまずい。馬だって食べられたくないだろうから、可能性は充分にある。
 歯噛みして、霊夢はシマウマを睨む。シマウマも霊夢を見つめ続ける。小鳥の鳴き声が和やかに響く青空と、綿のような入道雲。夕立があるだろう。少しは涼しくなるだろうか。
「……もうエサなんてやらないわよ。諦めて帰りなさい」
 霊夢が驚かせようと一歩前へ強く踏み出すも、シマウマは動かない。じっとこちらを見つめるだけ。さらに一歩踏み出す。動かない。さらに一歩……近付くとシマウマは、随分痩せている様に見えた……いや、馬の健康なんて見分ける方法を知らないけれど、目の前のそれは明らかに弱っている。立っているのもやっとだと思えるほど。さらに近付く霊夢を、シマウマはじっと見つめるが、警戒はしていないようだ。警戒も出来ないくらい、衰弱しているのか。
 目の前まで迫って、霊夢はそっと右手を伸ばした。ゆっくり、優しく、シマウマの頭に触れる。彼は目を瞑り、座り込んで、そして倒れた。地面に横ばいとなって、うっすら目を開けて、霊夢をまた見つめる。
「――ああ、そっか……」
 呟いた霊夢は、優しい微笑を浮かべていた。しゃがみ込んで、シマウマの頭をそっと撫でる。安堵したかのように、再びシマウマは両目を瞑った。
「解ったわよ……一人は、寂しいものね」
 応えるかのように、シマウマはぐうぅと、弱々しく嘶く。やがて呼吸の気配も遠のいて、彼は動かなくなった。
 霊夢の頬に、ぽたりと雫が落ち始めた。

「なぁ、あれ墓か?」
 ある豪雨の日、雷に浮かれて遊びに来た白黒子供が、縁側から見える庭の端を指差す。簡易的な墓石のようなものが建っていた。
「馬のね」
「うま? また妙なもの埋葬したなぁ。なんだ、食べたのか」
 湯気立つ緑鮮やかなお茶を、一口。ふぅっと溜め息を吐いて――
「……食べられない馬だったわ」
 そう、応えた。



~終~


 あれ……なんでおれが書いてんだ……?
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